「利酒師の資格を持っています」と言うと、相手はへ〜すごいね!と言ってくださることがほとんどです。

しかしよく考えてみると、利酒師って、いったいどんなことができる人なんでしょうか。

“利き酒”と聞くと、複数のお酒が入ったグラスを飲み比べながら、

「この味は…『獺祭 純米大吟醸50』!」

「これは…『黒牛 純米吟醸 無濾過生原酒』!」

など、銘柄やスペックを言い当てている様子を思い浮かべるかもしれません。

ところが、おそらく利酒師のほとんどはそんなことはしません(やればできる人もいるでしょうが)。

なぜなら、そんなことをしてもあまり意味がないから……。

利酒師は、飲食業に携わる人々のための資格であり、言うなれば“日本酒ソムリエ”。

つまり、お客さんに、日本酒と食事を楽しんでもらうためのサービスができる人のことです。

お客さんの前で、ソムリエが目をつぶって「これは……『栄光冨士』!」などと叫んでも、お客さんに「なんだこいつ」と思われてしまうだけです。

もちろん個人によって技能は異なりますが、わたしの考える「利酒師が(最低限)できること」は以下の4つ。

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【1】日本酒を「いちばんおいしい状態」で提供できる

そもそも「利き酒」とは「銘柄」ではなく「品質」を見極めること。

利酒師の資格取得の過程でも、「保存状態が悪かったせいでマズくなったお酒」と「保存状態の良かったお酒」の飲み比べなどをして、良いお酒・悪いお酒の区別ができるようにトレーニングします。

また、おいしい状態をキープするための保存方法も理解しています。

【2】それぞれの日本酒の味を理解し、ピッタリの食事を提供できる

利酒師資格を提供しているSSI(日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会)では、日本酒の味わいを大きく4つに分けており、利酒師は、日本酒を飲むとそのお酒がどのタイプに該当するのかを判断することができます。

(この区分方法が主流とされていますが、すべての日本酒のプロフェッショナルが共有しているわけではありません)

味わいのタイプによって合う食事も異なりますが、利酒師はそれぞれのお酒にどんな肴を合わせればよいのかを知っています。

【3】日本酒の味わいをわかりやすく表現することができる

日本酒のパッケージはシンプルで、味に関する情報がほとんど書かれていません(聞くところによると、酒税法などの制約で書けることや書き方が定められているのだそうです)。

利酒師は、お客さんのために、その特徴と魅力をわかりやすく表現することができます。

表現力に関しては個々のセンスに依るところが大きいですが、個人的にはワインソムリエを真似したような「メロンのような味わい」などの西洋文化的表現方法はあまり日本酒には合わないような……と思っています(使いすぎると飲み手に伝わりにくい、という意味で)。

【4】日本酒の製造方法や歴史について説明できる

利酒師は、基礎知識として、日本酒の製造方法や歴史ももちろん知っています。

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先ほど「最低限」と書きましたが、資格取得の過程で身に着けられるのは上記の能力だけ。つまり、そこからどのように技能を高めてゆくかは、それ以外の個人の努力に関わってくるのです。

利酒師の資格を取ったとき、私は飲食業で働こうと思っていたわけではありませんでした。

では、なぜ資格を取ろうと思ったのか。それは、この世で何の疑いもなく好きだと言えるものがお酒しかなかったからなのですが……。

利酒師を名乗っているにもかかわらず、お酒を飲むとつい楽しく酔っぱらってしまって、上記の漫画のように勉強モードになれないこともしばしばです。

言い訳ではありませんが、知識ばかりを伝えて「なんだか難しそう」と感じさせてしまったり、せっかくの日本酒の時間を(周りの人も含めて)くつろげないものにしてしまうのではなく、日本酒をもっと親しみやすいものだと感じ、愛してもらえるように、「お酒は楽しい」という気持ちを第一に、そのために必要ないろいろを伝えていければ、と思っています。

お酒は、身体で飲むものです。Don’t think! Feel!

English Version

One thought on “利酒師にできること”

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